会報誌たくみ

 

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現場できっちり納めるのがプロ
難易度高い仕事にトライしたい

有限会社 海野鉄筋工業所
代表取締役所長 海野政也氏(千曲市須坂)

プロフィール/昭和35(1960)年11月18日、千曲市生まれ、53歳。社員14人。ご家族は夫人と一男二女。

 

「現場できっちり鉄筋を納める。それがわれわれフロの使命。さらに難易度の高い仕事にトライして、技術の高みを目指したい」と熱く語る。
建設会社で建築現場の代理人を経験したあと、長野冬季五輪を前に家業に転じた。下働きから始まり一通り現場を経験した。12年前に父から経営のバトンを継いで現在は、技術力の向上と若手の育成を最大のテーマに奔走している。
「いまのゼネコンさんは商社で、技術屋ではない」と辛口だ。
施工図も外注に丸投げしてしまうため、現場のことを完全に把握している代理人は少ない。過密配筋の設計のため、現場で鉄筋が納まらないトラブルもある。
「鉄筋には空きが必要。現場で納まりません、ではプロは務まらない。事前検討元請けに言いにくいこともどんどん言っていく姿勢が大事だ」と訴える。

 


長く続いた建設業界の低迷期、鉄筋業界でも職人のフライドは崩れ去った。「廃業した同業者もたくさんいる」と唇をかみ締める。だが、アベノミクスなどの影響を受け、最近、少し潮目が変わってきた。

長野県鉄筋業協会の会長という業界のリーダーとしての立場から、「いまをチャンスととらえ、状況を変えていきたい」と力を込める。社会保険を完備し、職人が年齢に応じた年収を得て生活設計ができ、定年後は年金で暮らせるというモデルをつくっていく考えだ。

 


業界を取り巻く環境に少し明るさが見えたとはいえ、「(鉄筋は)本質的には技能職。技術の伝承がとても難しい状況に変わりはない」。若い人たちには、「どんなにいい仕事をしても最終的には見えなくなってしまう仕事。逆にそこに誇りを持ち、仕事好きになってほしい」と期待する。

 

直営の職人集団を抱え、高い技術力で知られる会社を支える大きな存在は78歳になった父でもある会長の海野竹雄氏だ。「加工場でボソボソと的確な助言をささやいたり、時には訪れた現場で大声で叱咤激励してくれたりする。それがうちの職人の意識と技術のレベルを自然に引き上げてくれている」と感謝する。
「昨年採用した18歳の若者が、朝6時半の集合に一度も遅刻したことがなく、『仕事が楽しい』と言ってくれるんです」と目を細める。次代を担う鉄筋職人は、着実に育っている。(関卓実)

 

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