会報誌たくみ

 

会員にきく

情熱とこだわりのカーテンづくり
美しさは下げてみなければわからない

インテリア販売ヤマタ 
山田一忠氏(長野市南掘)

プロフィール/昭和25(1950)年7月26日、下水内郡栄村生まれ、63歳。92歳の母が一人暮らしをしている栄村の生家を定期的に訪れ、「農的な暮らし」を楽しんでいる。ご家族は夫人と二女、孫二人、おかめインコー羽

 

「カーテンの話を始めると止まらないんです」。言葉の端々にカーテンづくりにかける情熱と強いこだわりがにじみ出る。かたわらで「また、始まった」と徹笑む一子夫人と30年近く、文字通り二人三脚でやってきた。

 

創業当時は、まさに住宅の新築ラッシュの時代。日本人の暮らしとともに住宅のスタイルが洋風化する中、「広緑や障子がなくなり、窓が主流になる」と時代を見越し、店を開いた。開店までの2年間、メーカーに通い詰め、生地や縫製技術などを徹底的に研究。「メーカーにはセンチ単位の寸法しかなかったが、うちはミリ単位で縫製していた。メーカーが、製品カタログの写真に使うカーテンの製作を、よくうちに依頼してきた」と笑いながら振り返る。

 

 

力一テンの素材は、生産工場の事情などから、アクリルがほぽなくなり、現在はほとんどがポリエステル100%。「本来は照明を吸収して色合いもきれいで、ドレープ(プリーツ。カーテンの折れ目)が美しく出るアクリルが最も適している」と少し寂しそうに語る。ポリエステルはしわになりにくく縮みにくいなどのメリットはあるが、ドレープが自然にはうまく出ないため、後で形状記憶加工を施す。
「カーテンの美しさは下げてみなければわからない」と言い切る。「広げたときに美しいドレープが出る。タッセルを使わなくても美しく納まる」がこだわりだ。“ひだ山”も創業当初から、「どんなに予算の少ないお客さんにも、仕上がりの美しい2倍ヒダをすすめてきた」。ほかの業者でカーテンをつくったお客が、「ぱっと広がってしまい納めてもまとまらない。カタログと全然違う」と駆け込んで来ることも多いという。

 

お店で商談がまとまることはない。「そんなに抱えて」と笑われるほどの種類と大きさのサンプルを持ってお客(施主)の家を訪れる。「(見本帳の)生地選びがカーテン選びではないんです。部屋の感じ、窓枠や壁、床の色、照明の陰影といった条件にあわせてカーテンが決まるんです」と力を込める。

 

納品の際は、「カーテンを下げ、施主の声を直接聞くまでは帰らない」がポリシー。背中越しに「うわあ、素敵!きれい!」と聞こえる声が最高の喜びだ。

(関辛実)

 

 

<<BACK

 

↑このページの上部へ