会報誌たくみ

 

定例研修会報告 平成29年度

 

平成29年度 第8回研修会

大雪渓酒造 花紋大雪渓 見学会

開催日/平成30年6月2日
師/降幡廣信氏(当会副会長/㈱降幡建築設計事務所)

/// 川上恵一氏(当会会員/㈲かわかみ建築設計室)

古民家を店舗として再生

 

「信州の木建築賞」優秀賞を受賞した「大雪渓酒造 花紋大雪渓」(北安曇野郡池田町)を訪れた。同施設は当会の降幡廣信副会長の監修のもと、川上恵一氏が築1 5 0年の空き家となっていた古民家を曳家により約5m移動させ、直営ショップ兼事務所として用途変更し、再生させたもの。

 

一行は川上氏と降幡副会長から、古民家としての地域に馴染んだ佇まいを残すために工夫した話を聞き、実際に既存の外観や構造をできるだけ活用している点や内部の土間などに地元の素材を使用している箇所を見て回った。

 

川上氏は「今回の工事には曳家、大工、左官の職人技が必用不可欠だった」とし、職人の高齢化について「次世代への技術継承のためには、設計者は職人の技術が必要となるものをつくり、活躍する場所を用意しなければならない」とした。

 

平成29年度 第7回研修会

松代象山地下壕・高義亭・お花見・陶芸教室

開催日/平成30年4月14日
師/西澤嘉雄氏(㈲N設計所長)

4月研修会は、長野市松代で見学会と親睦会を実施。松代象山地下壕や高義亭を見学したほか、松代城址で昼食を兼ねたお花見、午後は松代陶苑で陶芸教室を行った。


午前中に見学した松代象山地下壕は、第二次世界大戦末期に本土決戦最後の拠点として、大本営を移すために掘削された歴史的遺物。
公開されているのは約500mだが、総延長は10km以上に及んでいる。この建設には、労働者として多くの人々が強制動員されたという経緯もあり、当時を考えさせられる見学会となった。

 

お昼は松代城の葉桜を見ながら、おにぎりとお団子をほおばった後に、恒例となっている松代陶苑での陶芸教室を体験。
今回で数回目の陶芸体験という人から、初めて体験する人まで、それぞれが思い思いに作品をつくりあげた。
職人がゆえに、作品へのこだわりが強く、一工夫されているものが多かった。焼き上がった作品は通常総会会場に展示される。

 

平成29年度 第6回研修会

信州名匠会リレートークVOL.19
ストーブ・サウナあれこれ

開催日/平成29年3月29日
師/山本耕平氏(長野サウナ販売㈱)

/// 岩﨑秀明氏(㈱メトス)

○一番大切なことは「焚きつけ」

 

今回のプレゼンターは、長野サウナ販売の山本耕平氏と、メトスの岩﨑秀明氏。
「火(Hi)story」と題し、日本の火にまつわる文化、ストーブやサウナについて説明した。

 

岩﨑氏は冒頭で「カマドでふっくらとしたご飯を炊き、囲炉裏で料理をし、家族全員で食事をする。ほんの数十年前までは火は身近な存在で、炎は生活の一部だった」と紹介。
現代社会は、スイッチ一つで簡単に料理ができ、風呂も沸き、「火が家の中から遠ざかってしまっている」とした。そのため、同氏は初めて暖炉・薪ストーブを使う人に対して「焚きつけのしかたを説明することを大切にしている」と話し、焚きつけから楽しんでもらうことで「徐々に大きくなっていく炎を見ていると、心にゆとりが生まれる」とした。

 

後半はサウナがテーマ。岩﨑氏は、テントサウナ、イグルーサウナ、サウナトレーナーなど様々なサウナの種類を紹介した。

 

終盤の質疑では、針葉樹と広葉樹の燃え方の違いなどが話題に。岩﨑氏は「針葉樹は高火力だが早く燃えてしまうため、敬遠されがち」「地域の土壌によって、同じ種類の薪でも燃え方が違う」「針葉樹と広葉樹は同じバランスで燃やすのが良い」などと詳細に回答し、リレートークを締めくくった。

 

平成29 年度 第5回研修会

信州名匠会リレートークVOL.18
消防防災設備のいろは

開催日/平成29年2月21日
師/白石大陸氏(サンコー特機㈱)

/// 伊藤 睦氏(能美防災㈱)

空気管式の施工は匠の技術が必要

 

○文化財に適した自火報を紹介

2018年初回となる研修会では、恒例の会員リレートークを実施した。講師はサンコー特機の白石大陸氏と能美防災の伊藤睦氏が務め、自動火災報知機や消防設備工事について説明した。

 

伊藤氏は、文化財に適した感知器として差動式分布型感知器(空気管式)と無線式の自動火災報知機を紹介。空気管式の感知器が文化庁の推薦であることに触れ「文化財に適している要因として、塗装して目立たないようにできるため、景観上優れている」と説明。しかしデメリットとして「施工がとても難しい」という点を挙げ、施工には名匠会の匠の技が必要とした。

同氏が文化財に推薦する感知器は無線式。「従来の感知器は配線工事が必要だが、無線式のものは不要」とメリットを述べ、無線を遮るものが少ない木造の文化財に特に適しているとし「施工性に優れた建物に優しい感知器」と解説した。実際に、伊藤氏と白石氏が無線式の自動火災報知シテムのデモンストレーションを披露した。

 

今回のテーマである自動火災報知機は、職人にとってはなじみのないものだが、日常生活では目にする機会が多い。そのため、一般教養としての勉強にもなるリレートークとなった。

 

平成29 年度 第4回研修会

信州名匠会リレートークVOL.17
トイレの話

開催日/平成29年12月19日
師/百瀬和巳氏(㈱LIXIL) 

/// 魚住浩司氏(㈱LIXIL)

トイレを空間として捉える

 

LIXIL(東京都)の百瀬和巳氏と魚住浩司氏を講師に迎え、トイレにまつわる話を聴いた。百瀬氏によれば「女性はトイレを空間として捉えている」という。
女性はデザインや掃除のしやすさを重視する傾向があるため、リフォームでは機能重視だけでなく「見た目を大きく変えることと、使いやすさを向上させることが重要」とした。
また、同氏は今後日本の少子高齢化が進行していくことに触れ「トイレは一日に複数回利用する場所なので、ユニバーサルデザインの配慮をしていく必要がある」とし「一つ一つの動作がスムーズに行えるようにすることが大切になってくる」と話した。


百瀬氏は日本に洋式水洗便器が普及するまでの経緯についても紹介。
「明治以降、文化の欧米化が進み、建築に洋風の様式が取り入れられた」といい、1880~90年代に腰かけ式の洋風便器がつくられ、水洗式の便器が輸入されたと話した。
高度経済成長期の人口増加を背景に、日本住宅公団が発足。洋風水洗便器は、同公団で採用されたために急速に普及したという 。
同氏は「トイレは用を足すための衛生陶器から、洗浄機能を持ち、快適機能を追加して進化してきた」とトイレの歴史を説明した。


日々利用しているトイレに関して、トイレの歴史や普及率など普段知りえないことまで学んだリレートークとなった。

 

平成29年度 第3回研修会

朝日村庁舎の見学会

開催日/平成29年11月25日
師/江口大輝氏(㈱宮本忠長建築設計事務所)

/// 倉橋美有希氏(㈱倉橋建築計画事務所)

大規模木造に匠が注目

 

今年度3回目となる研修会は、宮本・倉橋設計共同企業体で設計監理を行っている朝日村の新庁舎建設工事の現場を見学した。
新庁舎は、村産材であるカラマツやヒノキなどが多く利用され、大規模木造庁舎として注目されている。

 

講師を務めた宮本忠長建築設計事務所の江口氏は、執務室と交流ホールについてカラマツの集成材の登梁により自由度の高い空間としていることや、村長の意向により建立した2本の象徴木を紹介した。

 

 

 

 

平成29年度 第2回研修会

信州名匠会リレートークVOL.16
【カーテンは部屋の雰囲気を一変させる】

開催日/平成29年9月27日
師/山田一忠氏(インテリア販売ヤマダ)

山田一忠氏は、約30種類のカーテンやブラインドなどを並べて、一つ一つの特徴や活用事例を紹介した。カーテンについて「今まで2倍ヒダにこだわってきた」という山田氏。「多少縮んだとしても生地に余裕があって長持ちする」ためだが、生地の量が多くなり費用が高くなるデメリットがある。「だから勧めはするが、お客さんの予算に応じて提案は変える。生地の量など応用できる点、工夫できる点がカーテンの面白いところ」だという。

 

また、山田氏はカーテンレールとフックが重要だとし、「レールが良いとカーテンがスムーズに動くため、破けたり裂けたりすることがなく、長く使用することができる」とメリットを説明。しかし「こだわっているユーザーは少ない」と笑う。

 

最後に山田氏は「私はコーディネーターなので、お客さんに対してカタログだけで提案はしない。実際に商品を持ってお客さんの家に行き、家の雰囲気やニーズを確認してから提案し、選んでもらうことが大切」と話し、「カーテンは部屋の雰
囲気を一変させることができる。部屋の中で広い面積を占めるため、生活に潤いを与えるものだ」と語った

 

平成29年度 第1回研修会

松田家保存整備事業見学会

平成29年7月22日
講 師 :矢島宏雄氏(千曲市文化財センター所長)

県宝指定の松田家を見学

 

今年度1回目の研修会は、千曲市八幡の松田家の見学をした。松田家は、中世の武士の館だったものが神主の屋敷として現代に残っている珍しいケースで、2004年に県宝に指定されている。

 

松田家では、中世の居館跡をほうふつとする堀や土塁、1万数千点の古文書、書画、什器などの維持管理のために、2005年度から保存整備事業を行っている。全体を博物館として整備するため、建物の傷んだ部分だけを改修・交換する手法が用いられている。

 

当日は千曲市歴史文化財センターの矢島宏雄所長が参加し、「戦国時代の武士の館が神主の屋敷として現代に残っているのは無類」だと説明した。
このほか、神社の祭りに参加した県知事を接待するためにつくられた「新座敷」、県宝の「主屋」、棟木に寛政6年(1794年)の墨書きがある「味噌蔵」、裏庭にある「おたや」「隠居部屋」などを見学した。

 

 

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