定例研修会報告 平成30年度
平成31年度 第8回研修会
松代のお花見・見学・陶芸教室
開催日/開催日:令和元年5月25日(土)
講/師/堀 誠氏(当会理事・建築工房アカシア)
/// 堀 幸一氏(建築工房アカシア)
/// 勝山敏雄氏(かつやま建築工房)
コンセプトは「信州の風景をとりこむ」
5月の第8回研修会では長野県松本平広域公園で開催された「信州花フェスタ2019」の「信州リビングガーデンエリア」を中心に見学を行った。
このエリアでは県内企業による長野県産木材を
使用した木造建物3棟の展示がされており、その中の1棟である炭平コーポレーション棟で、設計監理を担当したかつやま設計工房の勝山敏雄氏、施工を担当した当会会員の堀誠氏と堀幸一氏に建物のコンセプトや特徴について説明をしていただいた。
建物としては構造材や内外装材に北相木村産のカラマツと杉を使用し、天井は木と鋼材によるハイブリッドトラスとすることで特徴的な空間を実現している。
断熱材には木質系のエコボードを使用するなど自然素材にこだわった建物となっていた。
信州の風景をとりこむというコンセプトのとおり、建物両側の木製建具を開けると建物の内部と外部が一体となり、信州の爽やかな風が通り抜ける。軒下のウッドデッキでは多くの来場者が腰を下ろし、寛ぐ姿が見られた。
平成30年度 第7回研修会
松代のお花見・見学・陶芸教室
開催日/開催日:平成31年4月6日
講/師/西澤嘉雄氏(㈱N建築設計事務所 所長)
曳き家工事は会員の金田勝良氏が担う
毎年恒例となっている松代での見学会・花見・陶芸教室を行った。真田邸(新御殿)は、江戸末期の元治元年(1864)に、松代藩9代藩主・真田幸教により、その義母・貞松院の住居として建てられた。その後、幸教自身の隠居所、さらに明治以降は真田家の私邸になり、昭和41年(1966)には、真田家から当時の松代町へと譲渡され現在に至る。平成16年度(2004年度)から約10年を費やし、本格的な保存整備事業が行われた。
今回の見学会では、この工事の曳き家工事を行った金田工業所の金田勝良氏から、文化財工事ならではの苦労話等、貴重な話をお聞きすることが出来た。
その後、桜はまだつぼみだったが、雲ひとつない好天の中、花見弁当をいただきながら和やかなひと時を過ごした。
午後は、松代焼の松代陶苑に移動し、各々1㎏の粘土をもとに約2時間、土と格闘。茶碗、湯のみ、お皿等、個性豊かな作品作りに集中した。松代焼の独特の風合いに焼きあがった作品が展示される総会が楽しみである。
平成30年度 第6回研修会
信州名匠会リレートークVOL.21
空調設備の歩み~快適環境と省エネ
開催日/平成31年3月20日
講/師/本澤 篤氏(㈱マナテック)
/// 寺田明香氏(日立アプライアンス㈱)
エアコンの歴史をひも解く
時代とともに普及、省エネ、節電へ
寺田氏は、日立の製品を主にエアコンの歴史を紹介。「日立が1952年、日本初となるウィンドウ型エアコンを発売した際には、大卒の初任給が8千円の時代に24万円だった」「1965年にJIS規格の冷房エアコンが発売されたのをきっかけに一般家庭への普及が広まった」「1975年になると、性能の中に『省エネ』というキーワードが入った」「2011年の東日本大震災から『節電』が注目されはじめた」など、時代背景を織り交ぜつつ話した。
住宅建築との関連では「『畳何枚分』と冷房スペックを記載しているが、それは一般的な木造の場合であり、高気密高断熱などの居住性の高い家ではオーバースペックになる」としたほか、「デザイン重視のために室外機を壁などで囲う事例があるが、そうすると空気が回らずにエアコンの効率が下がり、カビも発生しやすくなる」「エアコンの設置位置によっては人感センサーなどが作動できなくなり、節電機能などが使えなくなる。住宅にあった機種を選んで」など、意匠とエアコンとの兼ね合いについて注意点を話した。
平成30年度 第5回研修会
塩尻市北部拠点センター 見学
開催日/平成31年2月23日
講/師/嶋本耕三氏(宮本忠長建築設計事務所 設計監理主)
/// 伊藤 寿氏(松本土建㈱)
大規模木造の交流拠点施設を見学
第5回研修会では、塩尻市の北部交流センター建設工事の現場見学会を実施した。38人が参加し、講師を務めた嶋本氏と伊藤氏の案内で、施設内を見て回った。
嶋本氏は、施設の設計コンセプトや概要、機能について、模型を用いながら説明。施設の中央にプレイルームを配置している理由に「子どもを中心に人と人がつながる施設を目指している」と話した。図書館棟と子育て支援センター・支所棟をつなぐ通路を軒下空間とすることで「広丘駅から短歌館への新しい『みち』としての回遊拠点の役割を果たす」と解説した。
同センター(木造2F、延べ約2000㎡)は、図書館、支所、子育て支援センター等の機能を備えた大規模地域交流拠点施設として注目を集めている。新しい技術である「CLT板」を採用しているほか、県産材や市産材も多く利用している。
2019年7月から開館予定。
平成30年度 第4回研修会
松田家住宅斎館 見学
開催日/平成30年12月22日
講/師/西澤嘉雄氏(㈱N設計事務所 所長)
神主屋敷であったことを象徴する建物
松田家は、千曲市八幡に鎮座する武水別神社の神主として四百年の歴史を有しており、県宝に指定されている。
2005年度より保存整備事業が行われ、松田家全体を博物館として整備し、同家が伝えてきた戦国時代から近代にいたる膨大な文書をはじめとする歴史史料を展示・公開する予定だった。
一昨年、火災により主屋、斎館、新座敷、料理の間など7棟が全焼し、神事で用いられていた衣装や提灯、家具などの民俗資料についても多くが焼失してしまった。書籍や古文書についても、一部焼けたり、水に濡れるなどの被害を受けたものの、貴重な文書類は収蔵庫に保管されており、被害を免れた。現在、焼損した建物の復元に向けて、調査、修理が進められている。
内部見学をした斎館は、松田家が神主屋敷であったことを象徴する建物で、大頭祭の出立式が行われるなど、祭事にも欠くことができない建物であるため、先行して修理が行われた。焼損した斎館の部材ひとつひとつを調べて、使える部材はできるだけ使用しているとのことだった。
主屋をはじめとする火災被害に見舞われた建物は、調査のため鎮火したままの状態で残っており、参加者は被害の甚大さを窺い知ることとなった。
平成30年度 第3回研修会
海野宿滞在型交流施設うんのわ 見学会
開催日/平成30年11月18日
講/師/土本俊和氏(当会会長/信州大学工学部建築学科教授)
伝統的意匠を生かした滞在と交流の場の誕生
2017年度の「信州の木建築賞」最優秀賞を受賞した「海野宿滞在型交流施設うんのわ」(東御市)を訪れた。同施設は古民家をリノベーションしたもので、現代技術と伝統建築の両立を図っている。「うんのわ」の見直し調査から基本構想、設計に携わった土本俊和会長の案内で施設や街並みを見て回った。
土本会長は「海野宿を訪れる人が休憩できるように、街道から宿泊棟を抜け、中庭に誰もが出入りできるようにした。スロープを設置して飲食棟と裏庭への導線の確保とユニバーザルデザインを考慮した」「伝統的な意匠を残すよう設計している」など建築の特徴を紹介。また「最初は小学生が立ち寄る施設を考えていたが、市長からの要望で滞在型の交流施設になった」「リノベーションの計画では、文化庁から『大胆な案』と指摘され、賛否両論があった」と裏話も交えながら、施設について解説した。
平成30年度 第2回研修会
信州名匠会リレートークVOL.20
【防水工事 シーリングのTPO】
開催日/平成30年10月26日
講/師/坂田守夫氏(当会専務理事/坂田工業㈱)
/// 齋藤大助氏(ジャパンマテリアル㈱)
/// 白井 健氏(㈱ダイフレックス)
防水工事をテーマに、建物の防水性を高めるために継ぎ目や隙間に埋め込む「シーリング材」について学んだ。冒頭、齋藤氏はシリコーン系や変性シリコーン系など10種類以上のシーリング材の種類を説明。「同じ材種でも各メーカーごとに適している用途は異なる」とし「施工箇所を十分考慮して、最適なシーリング材を選択する必要がある」と強調した。「プールの目地と床目地に変性シリコーン系シーリング材を施工してしまい、塩素によって溶解したケースがある」と施工箇所に不適合なシーリング材を施工してしまった失敗事例をあげ、注意を喚起した。
白井氏は自社で取り扱うハイブリット多用途型シーリング材「ハイフレックスUA-NEO」を紹介。2成分形変性シリコーン系シーリング材で発生する薄層未硬化や虹色現象、汚れの堆積がしない点を特長に挙げ、従来の製品と比較し、耐候性や耐久性(耐久性区分10030相当)に優れていると伝えた。
平成30年度 第1回研修会
降幡廣信氏のお話「民家再生と国際コンペ受賞の報告」
平成30年7月26日
講 師 :降幡廣信氏(当会副会長/㈱降幡建築設計事務所)
「日本の伝統的な美」評価に喜び
降幡建築設計事務所(松本市)が設計し2007年にリニューアルオープンした「料理宿やまざき」は先ごろ、さまざまな製品やグラフィックデザイン、建築など100を超える部門で優れたデザインを表彰する世界最大級のデザインコンペティション「A' Design Award(エーダッシュ・デザイン・アワード)」の2018年版「建築・構造設計部門」において銀賞を受賞した。
これを記念して信州名匠会では、7月のリレートークのプレゼンターに同事務所代表の降幡廣信氏を招待。同氏は、受賞の経緯と授賞式の様子などを会員らに語った。
降幡氏が手掛けた「料理宿やまざき」は、福井県越前海岸の老舗旅館で、加賀地方の築120年の古民家を移築再生したものだ。「受賞作の多くは現代的で、直線的で、シンプルで軽やか。一方で私の『料理宿やまざき』は伝統的で、複雑で、歴史を背負った重さがある」と話し「他とは違ったものを賞に選んでくれ、光栄に思っている」と語った。
「料理宿やまざき」は木造で「もともと厳しい加賀の自然環境に耐えるたくましさを生かした」という。雪深い地方のため、腰壁には雪に弱いしっくいを使わず板壁を用いるなど「日本の地方ごとの自然環境に定着し、なじんだもの」だといい「それが上品な美となって訴えかけてくる」とした。
建物のなかでは、古民家の要となる柱や梁組みはロビーや大広間に使い、新しくつくった部分は伝統的な意匠でなじませた。そのためには「木の持つ肌の味わい、質感が重要だ」とし「ただ木に塗って色合いを合わせようとすると厚みが出てしまい、肌が出ない。1000番の水やすりを掛けて、人が手を使ってさわると落ち着き、おだやかさが出て上品になる」と話した。「手は心と直結している。最後に手仕事をすることが重要だ」
降幡氏はイタリア・コモで行われた授賞式の模様についても説明。「まるでお祭りのようだった」としながら「イタリア人の美やデザインに対する思いの深さ、歴史を感じた」と振り返った。「今回の受賞も『料理宿やまざき』は私のデザインではなく、日本の伝統的なデザイン。そうしたものに美しさ、デザイン性を感じ、選んでもらったことに感謝している」