会報誌たくみ

 

定例研修会報告 令和3年度

 

令和3年度 第4回研修会

松田家主屋復元工事完成見学会

開催日/令和4年5月21日
師/西澤嘉雄氏(株式会社 N建築設計事務所)

昔の大工の凄さを実感

 

令和3年度第4回研修会は、前年5月に訪れた千曲市八幡の松田家主屋復元工事の完成見学会として、設計監理を担当された西澤嘉雄氏に案内していただいた。

 

平成29年9月に焼失した主屋の復元工事は、信州名匠会の会員の力を結集して作業が進められてきた。「この面積でお金と材料の裏付け、下打ち合わせがないとこれだけの図面は描けない。昔の大工の凄さが分かる。みなさんにとっても思い出に残る建物になったのではないかと思う」。

建物は、古民家に特有の田の字型の間取り、真壁構造で、漆喰仕上げの壁、三和土の土間といった伝統的な日本家屋の容姿である。「屋根には特に苦労した」と振り返る西澤氏。腰屋根が一間伸びていて、排煙設備を設ける必要があった。

 

和室について西澤氏は「おもてなしの精神が随所に反映されている。縁側越しに庭を眺めていると、物語が生まれてくるようだ。障子を通したやわらかな陽光を、現代の素材でどう表現するかも問われた」と語る。

 

「昔の姿の忠実な復元を取るか、一つひとつ決めていかないといけない。意匠側の意見と消防面からの視点、用途も実際に使う立場に立って考えないといけない。常に自分なりにジャッジする必要があった。職人さんにしてみれば早く決めてくださいということだろうし。そうしたせめぎ合いの中で形にしていくことは、大変だけれども、モノづくりの世界の醍醐味だと思う」と感慨を込めて語っていた。

 

令和3年度 第3回研修会

松代藩文武学校見学と陶芸教室

開催日/令和4年4月9日
師/西澤嘉雄氏(株式会社 N建築設計事務所)

新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらず、令和3年12月研修会、令和4年新年会、そして2月、3月の研修会の開催を見合わせ、感染者数が減少した4月に、毎年恒例の松代見学会とお花見、陶芸教室を開催した。

 

松代の風土の中で深まる親睦

 

初めに松代藩文武学校を訪れた。
この施設は、文武を奨励した松代藩八代藩主・幸貫が水戸の弘道館にならって計画し、九代・幸教の時代に完成した松代藩の藩校。1953年(昭和28年)に国の史跡に指定されている。
2011年から2021年10月かけて耐震改修工事が行われた。創建時の営みが垣間見える、威厳のある建物であった。

 

松代城址公園で昼食をとった後、咲き始めた桜の花を楽しみながら松代陶苑にて陶芸体験を行った。2時間という短い時間であったが、参加された方々の創作された陶芸は、個性あふれる力作が並んでいた。

 

令和3年度 第1回研修会

地域材伐採現場 見学会

開催日/令和3年7月31日
師/春日賢一氏(長野森林組合森づくり推進課課長)
/// 坂戸雄世氏(営業企画課)

今年度1回目の研修会は、飯綱町の国有林にて地域材伐採場の見学会を行った。
昨年から続く新型コロナウイルス感染症の影響を受け、現在外国産の木材が著しく不足する事態に陥っており「ウッドショック」といわれる状態となっている。そのため木材価格が高騰し、建設業界全体に大きな打撃となっている。

 

地域材の現状を知るべく、長野森林組合に講師を依頼し、国有林を訪れた。

現地では伐倒の様子を見せていただき、職員によるチェーンソーとハーベスターを利用した伐倒の様子を見学した。残存木を損傷しないようにするため樹木を列ごとに伐倒していく列状間伐を行っていると伺った。

主な工程としてはチェーンソーを用いての伐倒を行い、ハーベスターを用いて伐倒・造材、最終的にフォワーダを用いた集搬を行っているとのことである。

現状、国産材は流通のシステムが十分に整っているとは言えず、活用についての課題は多い。普段は立ち入ることができない、国有林の材木伐採現場を見学するという大変貴重な体験ができ、有意義な研修会となった。

 

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